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RunnerのケイヒンPE24キャブレターへの換装


以下のコンテンツを元にキャブの改造やエアクリーナーボックス加工、キャブ換装する際はくれぐれも自己責任の上でお願いいたします。いかなるトラブルに対しても筆者は一切保証いたしかねます。なお、今回のキャブ換装にあたってはSkipperさんに色々とご教示戴きました。また、オイルジョイントをNAKAさんに譲って戴きました。ここに感謝の意を表します。<m(_ _)m>

はじめに

 ストリート仕様では、夜間に住宅地を走る事を考えると静かな仕様が望ましいと言えるでしょう。ツーリング用には出先での気候変化を考えるとパワーフィルターでなくエアクリボックス仕様が適しています。また、ランナーはリヤタイヤフェンダーがエアクリボックス上部でネジ止めされているので、エアクリボックスを取り去ると別途ステーを作成する等して支持してやる必要が出てきます。その上、パワーフィルター仕様ではキャブがエンジン側インテークマニホールドのみで支える事になる為、ステーを別途作成して支えないと振動によりずれたり、マニホールドの早期劣化を招きます。また、細かな粉塵の吸着率が落ちるとキャブからエンジン内部へ入ってエンジン寿命を縮める可能性も大です。

- 吸気音 吸気抵抗 セッティング 温度変化 粉塵除去 フェンダー用ステー
エアクリーナーBOX仕様 静か 比較的容易 平気 強い 必要なし
パワーフィルター仕様 うるさい シビア 弱い 弱い 別に用意する必要有
直キャブ/網仕様 凄くうるさい 更にシビア 駄目 崩れる 皆無

と云う訳で、ノーマルエアクリーナーBOXを使用してのキャブ換装を考えてみます。
 RunnerFX/FXRのノーマルキャブはDell'orto PHVB 20.5です。キャブ換装にはノーマルエアクリーナーBOX使用が前提だといくつかの選択肢が有ります。ケイヒンPWK28だとノーマルエアクリーナーBOXでは容量不足になるのでパワーフィルター等への変更が必要になります。マロッシからはDell'orto PHBL 25を使用したキットが出ており、ボルトオンで取り付ける事が出来ます。

メーカー キャブ種類 キャブの加工 ジェット類の入手 備考
Dell'orto PHBL 25 無加工 限られる MALOSSI 1611033
KEIHIN PE24 容易 -
MIKUNI FLAT24 容易 -

Dell'ortoキャブはセッティングが出し難いと聞いたのと、Joker90に取り付けていたBIGキャブキットのPE24が余っていて、SkipperさんからPE24は良いよと勧められたので、指導を受けつつPE24を付ける事にしました。なお、PE24はセッティング用のジェット類がPWK28と共通ですので、万が一後でPWK28に再換装する場合にジェットの使い廻しが出来るという利点も有ります。

PE24キャブレターの入手

 ケイヒンはコンシューマ向けに直接小売りはしていません。新品のPE24キャブ本体を入手する為には、デイトナキタコのBIGキャブキットの補修パーツとして売られている物を入手するのが一番容易でしょう。これはバイク用品店などで取り寄せが出来ます。型番は以下に示しておきます。スロットルバルブが#3の付いている物がお勧めです。(キタコはカタログに記載が有りませんのでお問い合わせ下さい)

メーカー 品名 型番 定価 メインジェット スロージェット スロットルバルブ
デイトナ KEIHIN PEキャブ本体 タイプ3 (PE24) 34787 \13,500 #115 #65 #3
デイトナ KEIHIN PEキャブ本体 タイプ4 (PE24) 34788 \13,500 #120 #65 #5
キタコ PE24キャブレター(NSR50/80用) 401-1010008 \11,000 ? ? ?
キタコ PE24キャブレター(RG50γ/ウルフ50用) 401-2003008 \11,000 ? ? #4

ネットオークションや個人売買等で中古品を入手という手も有ります。この場合は値段次第でビッグキャブキットを入手するのも良いでしょう。但し、場合によりオーバーホールの必要やスロットルバルブを別途購入する必要が有るかもしれません。ニードルは摩耗している可能性が有るので新品交換した方が安心でしょう。

キャブレターの加工

 キャブレター本体に分離給油用のオイルジョイントと負圧用のニップルを取り付けます。オイルジョイントは国産のJOG用純正キャブの中古品等からバイスプライヤー等で外した逆止弁付きの物を用いると、内部がストレートの物に比べてオイル消費量を押さえる事が出来ます。負圧用のニップルは太ささえ合えば単なるパイプでも何でもかまいません。私は不要品のビッグキャブキットのマニホールドから取り出して使用しました。インテークチャンバー用の分売パーツを取り寄せる手も有ります。また、ラジコンエンジン用パーツで使える物が有るという情報も有ります。なお、逆止弁無しのオイルジョイントや負圧用に使えるニップルはNAP'S練馬店で単品販売を行っている様です。外形はストレートではなく、L字型でも支障は有りません。


上がJOG/AXISの純正キャブから外したオイルジョイント。下は負圧用ニップル(左側は少し外径を削って有ります。)

 キャブレターのエンジン側左右に突起が有り、先端がへこんでメクラ穴になっています。そこに穴を開けて途中までニップル/ジョイントの入る大きさまで拡げます。アイドリング調整用のストップスクリューの有る側を負圧用、チョークレバー脇の縦に3つあるうちの真ん中をオイル用とします。
穴の断面は下図の様になります。

   |    ______|
   |__/
内側  __       外側
   |  \______
   |         |


左は負圧用、右の真ん中がオイル用に穴を開けた所です。


切削粉等を綺麗に清掃した後、開けた穴にニップル/ジョイントを差し込み、エポキシ系接着剤で接着します。硬化後に万が一位置や角度が違っていた場合は、ドライヤーで熱してやればエポキシ系接着剤は軟化するので外せます。


左:負圧ニップルを差し込んだ状態 右:オイルジョイントを差し込んだ状態


エンジン側からキャブ全体を見た状態

エアクリーナーBOXの加工

ノーマルエアクリーナーBOXは中で迷路の様になっています。20%のキャブ口径増大に伴い、中を加工します。駆動系カバー上のエアクリBOXの蓋を外します。蓋の裏に付いている仕切りの一部を切り取って、穴を開けます。リューターの刃に粘りつく感じの材質なので慎重に行って下さい。


ノーマルの状態


加工し終わった状態

なお、この程度の加工が中仕切り全除去から仕切りを残しつつ加工したうちで一番吸気音と低速のツキ、燃費のバランスが取れているとの事です。スポンジはノーマルより入手性に優れて安価なMALOSSIのレッドスポンジ(1411424 \700)を使用します。もっと穴開けしたり仕切りを取ったりすれば吸気抵抗は減りますが、多少の吸入抵抗を持たせておかないと気温や湿度にシビアになりすぎる傾向が有るとの事です。

ノーマルのデロルトキャブを外す

ランナーの場合は車体右側から作業すればそのまま外せます。慣れるまではメットイン底部を外した方が光線も入って見やすいでしょう。(ビス1本で外れます)


ノーマルのPHVBキャブ。右はメットイン底部から見た状態

 最初はホース類を止めている留め金のネジを緩めて、オートチョークとキャブヒーターの配線から外します。黒い筒をずらすとカプラーが見えますからカプラーを引き抜いて下さい。外した本体側の配線は邪魔にならない様な位置へずらします。
 次にキャブのエンジン側を止めているバンドのネジを緩め、エアクリーナー側のタイラップも切り取ります。その後マニホールドからキャブ本体を外します。外しにくい場合はエアクリーナーBOXを外してみて下さい。後は燃料ホース、オイルホース、負圧ホースをそれぞれ取り外します。


左はオートチョークとキャブヒーターの配線カプラ。右はキャブ前後を外した所

キャブ下のネジを緩めてフロート室内のガソリンを出します。

ワイヤーガイド移植

ノーマルキャブ上側の2本のネジを外します。すると内側からスプリングが飛び出してきます。そのまま引き抜くとスロットルバルブ類が出てきます。スロットルワイヤー先端のタイコをスプリングを押さえて押し出す様にしてずらしてスロットルバルブから外します。


左はトップを外した状態 右はスロットルバルブからワイヤー先端のタイコを押し出した状態

後は白いプラ製のプレートから外してやればケーブルは抜けます


左:スロットルバルブを外した状態。右:プレートとバネも取り去った状態

今度はトップ部のワイヤーガイドを外します。ネジ止めですが、接着剤で固めて有りますのでちょっと力を入れてやるとパキッと外れます。外したワイヤーガイドは接着剤を取り去ってからPE24のトップにそのままネジ込んで移植します。ノーマルキャブは組み立てた上で大切に保管しておきましょう。


左:ノーマルキャブトップとワイヤーガイド 右:ワイヤーガイドとノーマルキャブ/PE24のトップ

移植の終わったワイヤーガイドとトップにスロットルケーブルを差し込んでやります。その後スプリングと白いプレートを通してからスロットルバルブ横の溝を通して底面の凹みにはめこみます。


左はケーブルをトップに通した所。真ん中と右はスロットルバルブに止めた状態

 スロットルバルブを斜面になっている方をエアクリ側に向け、キャブ本体ボディーに入れ、トップを本体にねじ込んで装着します。(ニードルが引っかからない様に注意)
 それからアクセルグリップをひねって全閉から全開まで移動するかどうか確認します。そうならない場合はワイヤーガイドの先端のネジ/ナットでケーブルの長さを調整してやります。


左は全閉状態。右は全開状態(両方ともキャブのエアクリーナー側から見た状態)

燃料ホース、オイルホース、負圧ホースをそれぞれ差し込み、クリップで止めます。キャブ本体をエンジン側のインテークマニホールドに先に入れ、次いでエアクリーナー側も入れます。入れにくい時はエアクリBOXを外してからやります。なお、後のキャブセッティングの事を考え、筆者はステンレスバンドを別途用意いたしました。(28φ〜40φと42φ〜52φ)エンジン側も変えたのはノーマルバンドではナットが脱落しやすい為です。


左:クリップをラジオペンチで止める 右:ステンレスバンド

最後にホースを止めていた留め具をもう一度ネジ止めしてキャブ換装は終了です。


エンジン始動前にホース類が確実にキッチリ止めて有るかどうか念の為にもう一度確認して下さい。


左:取り付けられたケイヒンPE24 右:上から見た所 アイドリング調整は黒いつまみのストップスクリューで行います。その左側のマイナスネジがエアスクリューです。

ジェット類の交換

マニホールドから外して行う必要が有ります。
キャブ下側のフロート室を止めている2本のネジを外すと真鍮製のジェットが有ります。6角形の方がメインジェット(MJ)、その隣がスロージェット(SJ)です。交換の際は締め込み過ぎない様にご注意下さい。


左:フロート室の蓋、中:奥がMJ、その手前がSJ 右:左がMJ、右がSJ それぞれ番手が刻印されています。


ジェット類の着脱にはJETドライバーが便利です。

取付後のインプレ

 出足から非常に鋭い吹け上がりになりました。加速は恐ろしい程です。燃費は街乗りで21km/L以上です。特筆すべきはアイドリング時/低回転時の振動がかなり減少した事です。不正爆発が少なくなった為と思われます。アイドリング回転数も少し低めで安定する様になりました。また、夏場はラジエーターの電動ファンが頻繁に廻る様になります。これは、ノーマルキャブはスローがかなり濃い目で冷却していたのが無くなる為でしょう。クーラントの管理に気を付けた方が安心ですね。

セッティングの目安

 スロットルバルブ(カッタウェイ)は#3、ジェットニードルは標準の36Sでクリップ段数は真ん中の状態とします。ノーマル180エンジン/ノーマルマフラーの場合でMJ#100〜112(季節により変動/気温が高い程薄目で)、SJ#45くらいで必ず濃い目から始めて下さい。エアスクリューは1.0回転(冬)〜2.0回転(夏)戻しくらいから始めます。1回きちんとセッティングが出れば、ストリート仕様ではSJは年間で固定した番手として、後は季節によりエアスクリューとMJを変更して調整します。
 イリジウムプラグを使用している場合はかぶるとプラグが御臨終になる事も有るので普通のプラグにした上でセッティングを出すのをお勧めします。チャンバー付きの場合は全く違うと思われますからチャンバーの発売元にお問い合わせ下さい。高速道路等での連続高回転走行をする場合は保険の意味で普段より濃い目のMJを使用すると安心かと思われます。
なお、キャブセッティングの極意はこちらをご覧下さい。


参考までにPE24換装後のダイノジェットデータを掲載しておきます。図の青線がノーマルキャブ、緑線がPE24です。

追記

PE24を取付すると、ノーマルキャブより前後径が大きい為、エアクリーナーとのジョイントが折れ曲がる場合が有ります。この場合はジョイントを少し切り詰めて使用します。また、キャブのフロート室がリヤフェンダーと干渉する場合が有ります。ずっとそのままにしておくとフロート室が破損する事も考えられるので、走行後にフロート室とリヤフェンダーをチェックしてみて下さい。干渉していた場合はほんの少しキャブを斜めにすると逃げられます。

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